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クロメート処理とは?クロメート処理の原理と処理方法の変化について解説!

2023年08月28日

皆さんは、クロメート処理という言葉を聞いたことがありますか?
クロメート処理は、クロムの特性を使って金属に腐食を抑える効果を付加する方法です。

また、最近では従来の6価クロムによる処理から3価クロムによる処理に移行しつつあります。
そこで今回は、クロメート処理の原理から6価クロムと3価クロムによるクロメートの違いまでを解説していきます。

クロメート処理とは?クロメート処理の原理と処理方法の変化について解説!

クロメート処理とは?クロムめっきとはどう違うの?

クロメートは、金属の表面に皮膜を付けて腐食を抑える効果を底上げすることができます。
では、具体的にはどのように行なわれているのでしょうか?
そこで本項では、クロメート処理の原理からクロムめっきとの違いを解説していきます。

クロメート処理とは?

クロメート処理は、主に亜鉛めっきやアルミニウムなどの表面を保護するために行われます。
クロメートによる皮膜(クロメート皮膜)は、クロメート処理液と呼ばれるクロム酸などを含む処理液に対象物を浸し、対象物と処理液が化学反応を起こすことによって作られます。

以下は、亜鉛めっきのクロメート処理を例にしたクロメート皮膜の形成の順序です。

1.亜鉛がクロメート処理液に溶解する
2.クロメート処理液からクロムが分離する
3.化学反応を起こしクロメート皮膜が形成される

亜鉛は、クロムに比べて水分とよく反応するため、亜鉛めっきから処理液に溶けていきます。
すると、クロム酸が処理液に現れた亜鉛と反応したくなり、クロムが処理液に逃げていきます。
この時、亜鉛めっきの周りで起こる現象が化学反応です。

処理液に溶けだしたクロムは、処理液のアルカリ性と酸性のバランスを見て、亜鉛めっきの周りで処理液を中和しようと化学反応を進めます。
そして、化学反応を起こしたクロムが亜鉛めっき上にクロムの化合物として登場し、クロムによる皮膜(クロメート皮膜)が完成します。

クロメート処理にはどのような作用がある?

クロメート処理を行うことで対象物に形成されるクロメート皮膜には、「修復作用」と「硬化作用」があります。

1.修復作用
クロメート皮膜にキズが付いて亜鉛が表面に露出した場合、皮膜内のクロムがキズ口に薄い皮膜を形成し、クロメート皮膜を修復します。
そのため、亜鉛が外気に露出することを防ぎ、腐食を抑えることができます。

2.硬化作用
クロメート処理を行なった直後の皮膜は、水分を含んでいるため乾燥が必要です。
しかし、時間が経つと皮膜が硬化する作用もあり、皮膜としての効果を果たします。

このように、クロメート処理は皮膜の硬化に時間が必要ですが、自らキズを修復する作用を持つ優秀な皮膜と言えるのではないでしょうか。

クロムめっき処理との違いは?

クロメート処理とよく似た名前の処理方法にクロムめっき処理があります。
クロムめっき処理は、以下の順序で行われます。

1.クロムを含んだ処理水を用意する
2.マイナス極側に対象物を設置する
3.電気を流す
4.対象物を電解水から取り出す

上記の処理では、電気を流すことで対象物の表面にクロムの結晶を付着させます。
そして、対象物を処理水から取り出すと、対象物に付着したクロムが空気中の酸素と触れ、酸化被膜と呼ばれる皮膜を形成します。

このように、クロメート処理がクロム化合物で皮膜を作るのに対して、クロムめっき処理ではクロム自体が対象物の表面を覆うことが違う点となります。

なぜ6価クロムから3価クロムに移行しつつあるのか?

前項では、クロメート処理の原理やクロムめっきとの違いを解説しました。
では、なぜクロメート処理は、6価クロムから3価クロムに移行しつつあるのでしょうか?
本項では、クロメート処理の化学的な分類から紹介し、6価クロムから3価クロムへ移行している理由を紹介します。

クロメート処理の化学的な分類

クロメート処理の化学的な分類には、クロムの酸化数が重要です。
金属や気体などのさまざまな物質はすべて電子をまとって存在しており、安定して存在できる電子の数が決まっています。
この安定して存在できる電子の数が酸化数です。
クロムにも安定する電子の数(酸化数)が決まっており、酸化数が6つのケースを6価クロム、3つのケースを3価クロムと言います。

6価クロムから3価クロムへ移行している理由

本項では、6価クロムと3価クロムの特性から3価クロムへ移行している理由を見ていきます。

・6価クロム
6価クロムは、高い腐食を抑える効果を持つ反面、非常に強い毒性が強く、6価クロムを含む化合物の微粒子を吸い込むと呼吸系統を傷める恐れがあるとされています。
そのため、EUでは特定有害物質の使用制限に関する法律「RoSH指令」により、6価クロムの使用が制限されています。

・3価クロム
3価クロムは、人体に必要な必須ミネラルの1つとして数えられており、6価クロムのような毒性はありません。
また3価クロムは、6価クロムよりも腐食を抑える効果において優れているとされています。
このように、環境への配慮や腐食を抑える効果の高さから6価クロムから3価クロムによるクロメート処理に移行していることがわかります。

まとめ

今回は、クロメート処理の原理や種類について解説しました。
クロメート処理とクロムめっき処理の違いや6価クロムの有害性がわかりましたね。
本記事を参考に、クロメート処理に関する知識の向上に繋がれば幸いです。