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無電解ニッケルメッキとは?特徴やメリットをわかりやすく解説!
2023年02月09日
「無電解ニッケルメッキと電解ニッケルメッキの違いは?」
「同じメッキ加工なのに対象物に制限があるのはなぜ?」
このような疑問をお持ちではありませんか?
無電解ニッケルメッキは、対象物にメッキ塗装を施す技術の一つです。
本記事では、さまざまな部品や医療機器に使われている無電解ニッケルメッキの特徴や、メリット、デメリットについて解説していきます。
専門用語がわからない初心者でも理解できるような内容になっていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
無電解ニッケルメッキとは?
無電解ニッケルメッキとは、物体に金属の皮膜を施す加工技術です。
メッキ加工する対象物を選ばないといった特徴があり、比較的何に対しても加工が行えます。
また、加工後の処理や成分の含有割合を調整すれば、性質に特徴を持たせるのも可能です。
特定の略称はありませんが、本記事では「無電解」と表記させてもらいます。
電解ニッケルメッキとの違い
電解ニッケルメッキとは、物体に電流を通してメッキ加工する技術です。
無電解に比べてニッケル含有割合が多く、比率は99%以上といわれています。
メッキ加工するための処理時間が短く、コストが安く済むといった点がメリットです。
対して、対象物の形状によってはメッキの厚さにムラができるといったデメリットもあります。
カニゼンメッキとの違い
無電解を「カニゼンメッキ」と呼ぶ場合があります。
結論からいうと、カニゼンメッキは日本カニゼン株式会社が作成した商品の名称です。
無電解の総称ではありません。
日本で無電解ニッケルメッキを広めたのが日本カニゼンであったため「無電解=カニゼンメッキ」と表するケースがあります。
成分は一般の無電解と何も変わりません。
無電解ニッケルメッキの特徴3つ
無電解ニッケルメッキには、3つの特徴があります。
1.膜厚が均一なため精密な寸法が可能
2.複雑な形状や絶縁体にも対応できる
3.硬度を上げられる
それぞれの詳細について見ていきましょう。
特徴①膜厚が均一なため精密な寸法が可能
無電解は、対象物に化学反応を発生させてメッキ加工を行います。
電解ニッケルメッキと異なり、対象物に電流を流す必要がないため、メッキ皮膜が均一になります。
完成後の寸法が正確ですので、数ミクロン単位の誤差が致命傷になる精密機器にとっては大きなポイントです。
特徴②複雑な形状や絶縁体にも対応できる
電気ニッケルメッキの場合、対象物の形状によっては通電にムラが出てしまい、加工後のメッキがマチマチになってしまう場合があります。
しかし、無電解の場合は電気を必要としないため、どんな形状でも統一した加工が可能です。
また「電気を通す」といった前提がないため、セラミックやプラスチックなどの不導体(電気を通さない物体)にも加工ができます。
特徴③硬度を上げられる
無電解は加工の過程でリンを使用するため、加工後のメッキには数%だけリンが含有されています。
リンの含有量によって硬度を変更でき、ベーキング処理(熱処理)するとさらに硬度を高めるのも可能です。
硬度の上昇にともなって耐久性と摩耗性も上がるため、使用用途によってはベーキング処理を施すケースもあります。
メリット|ピンホールが少なく錆びにくい
ピンホールとは、加工後のメッキに現れる小さな穴です。
無電解は、ピンホールが発生しにくいといったメリットがあります。
理由は、加工後の断面が層のようになっているためです。
また、無電解は総じて錆びにくいといったメリットがあります。
無電解はスマートフォンなどの精密機器に使用される部品でも用いられる加工方法です。
部品が錆びてしまった場合、通電効率が下がり機能が下がる可能性もあります。
そのようなリスクを極力抑えられるのも無電解のメリットです。
デメリット|浴組成の管理が少し大変
無電解は、電解ニッケルメッキに比べて加工するための機器(浴組成)の変動が大きいです。
そのため、管理が少し大変といったデメリットがあります。
材料費も高く、加工の時間も長くかかるため、コストが高くなる点もデメリットです。
また、高温で加工しなければならないため、耐熱性の低い物は加工に向きません。
ある程度変形しても問題ない物であるのか、加工前の確認が大切です。
メッキ加工後の使用用途
メッキ加工後の使用用途は多種多様です。
代表的な製品は以下をご覧ください。
電子機器 | 基盤・ハードディスク・ICパッケージ・コンデンサ……など |
精密機器 | シャフト・バルブ・歯車……など |
自動車 | ブレーキ・ピストン……など |
医療 | 歯科用機械など |
無電解ニッケルメッキでよくある質問
無電解に関して、よくある質問に回答します。
無電解を理解するために活用していただけると幸いです。
Q1.表記記号は?
一般的には「ELP-Fe/Ni-P○μ」と表記する場合が多いです。
「○」の部分にはメッキの厚さが入ります。
例えば、20μの場合はそのまま20と記載するのが正解です。
また、まれにJISに従って表記するケースもあります。
Q2.メッキ液には何が使われる?
メッキ液には次亜リン酸ナトリウムが使用されています。
ほかにも、pH緩衝材、錯化剤・安定化剤などでメッキ液が構成されるケースが多いです。
メッキ液にリンが含まれているため、完成品に性質が付与できるのが無電解の特性です。
まとめ|不導体にもメッキ加工ができる技術
無電解ニッケルメッキとは、電気を使用せず化学反応で対象物にメッキ加工を施すための加工技術です。
通電が前提ではないため、形状が複雑な物体や、プラスチックなどの電気を通さない不導体にも加工ができます。
さまざまな部品へのメッキ加工として重宝されている偉大な加工技術です。
日本には、無電解ニッケルメッキのような金属皮膜加工を専門としている企業も少なくありません。