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無電解ニッケルメッキとは?4つの特徴や注意すべきデメリットについて解説!

2023年05月10日

無電解ニッケルメッキは、表面加工の分野で重要な役割を果たしている技術の一つです。
さまざまな素材に対し、均一にコーティングできるため汎用性が高い技術です。

本記事では無電解ニッケルメッキの3つの特徴やメリット・デメリットなどについて詳しく説明します。

無電解ニッケルメッキとは?4つの特徴や注意すべきデメリットについて解説!

メッキの基本知識

無電解ニッケルメッキについて解説する前に、表面処理やメッキの基本知識を整理します。

金属表面に特殊な加工を施し、機能を向上させることを表面処理といいます。
表面処理の1つにメッキがあります。
メッキとは、金属表面に異なる種類の金属を皮膜で覆う(薄くかぶせる)加工のことで、主目的はサビや腐食を防ぐことです。

メッキに用いられる素材は金や銀、銅、クロム、ニッケルなどです。

メッキの代表は溶融・電解・無電解の3種類です。
溶融メッキは、コーティングする金属よりも融点が低い金属を溶かし、溶けた金属にコーティングしたい金属をつけることでメッキを施します。

電解メッキは、酸化・還元反応を利用してメッキを施す技法です。
低コストでさまざまな金属や合金に利用できます。
しかし、複雑な形状のものへのメッキが難しく、均一にコーティングしにくいというデメリットがあります。

無電解ニッケルメッキとは何か

無電解メッキは、化学反応を用いてメッキを施す技法です。
メッキしたい金属や素材をメッキ液に浸して化学反応を利用してメッキを施す技法です。
電気を使用しないため、電流を通さないプラスチックやセラミックといった不導体にもメッキができます。

無電解ニッケルメッキの4つの特徴

無電解ニッケルメッキは、他のメッキにはない特徴を備えています。
今回は4つの特徴について解説します。

耐摩耗性に優れている

無電解ニッケルメッキは電解ニッケルメッキに比べ摩耗性で優れています。
硬さの基準の一つであるビッカース硬度で比較すると、電解ニッケルメッキの強度は200Hvほどですが、無電解ニッケルメッキは500Hv程度です。

また、加熱後の強度を比べると電解ニッケルメッキが500Hv、無電解ニッケルメッキは最高で1,000Hv程度まで硬度が上がります。

皮膜を均一にできる

1つ目の特徴はメッキの皮膜を均一にできることです。
電流を通す電解メッキの場合、電流が届きやすい場所と届きにくい場所では皮膜の厚みが異なってしまいます。

化学反応を用いる無電解メッキでは、ほぼ均一に反応が起こります。その結果、電解メッキよりも均一な皮膜となりやすいのです。

耐久性・耐薬品性・耐食性が高い

2つ目の特徴は耐久性・耐薬品性・耐食性が高いことです。
その理由はメッキ素材としてニッケルを用いているからです。
ニッケルには以下のような性質があります。

・サビに強い
・電気を良く通す
・ステンレスなどニッケル合金の材料にできる

特に重要なのはサビに強いことです。
鉄のように酸化してボロボロになることがないため、耐久性や耐食性を強化できるのです。

また、二硫化炭素や炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、アセトン、メチルアルコールなどを含むさまざまな薬品に対する抵抗力を持ち合わせています。
加えて、メッキ後の熱処理で硬度が上がるという特徴もあります。

さまざまな素材にメッキができる

無電解メッキは電流を用いずにメッキをするため、電気を通さないプラスチックやセラミックスに対してもメッキを施せます。
特殊な前処理を行うとアルミニウムやステンレス、銅といった素材に対してもメッキを施せます。

無電解ニッケルメッキのメリット

メリットは以下の2点です。

・仕上がりが美しい
・耐久性に優れる
・幅広い素材に対応

仕上がりが美しいのは、メッキの皮膜が均一だからで、ニッケルメッキならではのメリットだといえます。
耐久性が優れている理由は、耐摩耗性・耐薬品性・耐食性のいずれにおいても高い性能を持っているからです。
幅広い素材に対応できるのは、電気を通さずともメッキできるからです。
このように、無電解ニッケルメッキは他のメッキに比べて、非常に使い勝手が良いことがわかります。

無電解ニッケルメッキのデメリット

デメリットとしては以下の2点があげられます。

・反応が遅く高コスト
・メッキ液の管理が難しい

無電解ニッケルメッキは、電解メッキに比べ反応速度が遅いというデメリットがあります。化学反応を利用するため、メッキ液に浸す時間が電解メッキよりも長くなります。
材料費も電解メッキより高いため加工コストが上がってしまいます。
メッキ液の管理が難しいため、管理する技術や知識が必要となります。

無電解ニッケルメッキの用途

主な用途は自動車・バイクの部品のコーティング、電子部品のコーティング、航空機や船舶のエンジンでの使用など多岐にわたります。
いずれの産業でも硬度や耐食性・耐摩耗性などを向上させることが目的です。

まとめ

今回は金属のコーティングで広く用いられている無電解ニッケルメッキの特徴についてまとめました。
メッキを施すことで、強度や耐久性、耐薬品性が高まり、長持ちするようになります。